年々、日本の警備員の需要は高まっています。
主な理由としては、商業施設や大規模イベントでの警備の必要性が増していることが挙げられます。
警備職とは
警備職とは、主に人々や財産を保護するために雇われる仕事です。
社会の安全を守る重要な役割を果たす一方で、体力と精神力が試される職業です。
主な警備の内容
安全確保:施設やイベント会場、イベントなどでの人々や資産の安全を守ること。
犯罪予防:盗難や不法侵入、暴力行為などを未然に防ぐための監視やパトロール。
秩序維持:公共の場での秩序を保つこと。例えば、交通整理や集会の管理など。
緊急対応:事故や災害、火災などが発生した際の初期対応や、避難誘導。
警備職には、ビルや商業施設の警備員、交通警備員、イベント警備員など様々な種類があり、各々が専門的な知識や技能を必要とします。
また、多くの場合、警備業法に基づく資格や訓練が求められます。
警備職の種類
警備職にはさまざまな種類があり、それぞれが異なる役割や責任を担っています。
主な警備は以下の通りになります。
施設警備
役割:主にビル、オフィス、工場、学校などの特定の施設を守る
具体的な仕事内容
・侵入者を防ぐための巡回や監視。
・監視カメラやアラームシステムの操作
・非常時の対応(火災、事故など)
交通警備
役割:道路工事現場、交通整理、駐車場管理など公共の交通に関わる警備
具体的な仕事内容
・交通誘導
・事故防止のための看板やコーンの設置
・駐車場の管理と利用者への案内
身辺警護(ボディーガード)
役割:特定の個人(VIP、セレブリティ、ビジネスマン等)の身の安全を確保する
具体的な仕事内容
・クライアントの移動中の警護
・リスク評価と事前調査。
・危険からクライアントを護るための直接的な介入
イベント警備
役割:コンサート、スポーツイベント、フェスティバルなどの大規模集会の安全を保つ
具体的な仕事内容
・入場管理とチケットチェック。
・観客の流れを管理し、混乱を防ぐ
・非常時の避難誘導
機動警備
役割:特定の場所ではなく、広範囲にわたって移動しながら警備を行う
・具体的な仕事内容
・地域の巡回警備
・車両を用いた監視
・必要時には施設警備や交通警備に協力
特殊警備
役割:特殊な知識やスキルを必要とする警備業務(例:爆発物処理、特殊警護)
具体的な仕事内容
・爆発物の探知と除去
・高度な戦闘技術を要する警護
・特定の危険物への対策
現在の警備職の状態
人手不足と高齢化
警備業界では、人手不足が深刻な問題となっています。
この背景には、若者の関心の低下や、仕事の過酷さ、低賃金などが挙げられます。
高齢化も進んでおり、現場での労働力の確保が難しくなっています。特に、資格を持つ警備員の不足が顕著で、企業が新たな人材を育てる余裕がない場合もあります。
警備員の労働条件
警備職はシフト制が多く、夜勤や長時間労働が常態化していることが多いです。
また、病欠などが出た場合には、一人で48時間勤務を強いられることもあるなど、労働環境が厳しいとされています。さらに、仮眠時間や食事休憩の時間が給与から差し引かれるケースもあり、これが無給労働として批判されています。
業界の変化
警備業務の種類は多岐にわたり、施設警備、交通誘導警備、雑踏警備などがあります。
これらの業務は繁忙期と閑散期が存在し、例えばイベントや祭りがある時期は特に忙しくなります。
また、業界全体で見ると、優秀な警備会社は高い単価の仕事を請け負う一方で、教育を疎かにしてきた企業は業務を失い、廃業するケースも見られます。
資格と教育
警備員には一定の国家資格が求められており、新任教育や現任教育が重要視されています。
しかし、資格保持者の不足が業界の大きな課題となっており、一部の会社では資格保持者を急募する動きがあり、それが業界の浄化につながるとも言われています。
警備業の社会的地位
警備員の仕事は、社会の安全を守る重要な役割を持ちながらも、その労働条件や賃金が低いことが問題視されています。このため、労働環境の改善や、警備員の待遇向上についての議論が必要とされています。
警備職に重要な資格
警備員指導教育責任者は、警備業務に関する専門的な知識と技能を持ち、警備員に対して指導や教育を行う責任者です。
この資格は、昭和57年の警備業法改正により、機械警備業務管理者と共に制度化されました。平成17年の改正業法により、業務区分ごとに以下の4種類に分割されています。
1号警備(施設警備、保安警備、機械警備など)
2号警備(交通誘導警備、雑踏警備など)
3号警備(運搬警備)
4号警備(現金輸送警備)
この資格は、警備業務を適正に行うための重要な役割を果たし、各営業所ごとに選任が義務付けられています。
警備員指導教育責任者資格を取得するには、以下の方法があります。
受験資格
受講資格は最近5年間に当該警備業務に従事した期間が通算3年以上である者もしくは、警備業務検定に合格している者(ただし、2005年11月以前に合格した者は、現行制度と同等と見なされる)
講習を受ける
警備員指導教育責任者講習を受講し、修了考査に合格する必要があります。
この講習は、公安委員会が定めるところにより行われ、業務区分ごとに異なります。
新規取得講習と追加取得講習に分かれています。
新規取得講習は初めての方、追加取得講習は既に他の区分で資格を持っている方が受けます。
警備員検定は、日本の警備業務における専門知識と技能を証明するための国家検定制度です。
この検定は、警備業の質的向上を目的として設立され、特に事故防止や安全確保に必要な専門性を示すものです。
警備員検定の種類
警備員検定は以下の6種類に分かれ、各々に1級と2級があります。
・施設警備業務検定
・空港保安警備業務検定
・交通誘導警備業務検定
・雑踏警備業務検定
・貴重品運搬警備業務検定
・核燃料物質等運搬警備業務検定
警備員検定を取得するには、以下の方法があります。
受験資格
特に定められた資格はなく、警備業に従事している人やこれから従事する予定の人なら誰でも受験可能です
取得方法
・公安委員会による直接検定
都道府県の公安委員会が検定試験を実施します。
この試験は実技試験と学科試験から成ります。
受験申請は、管轄の警察署(生活安全課防犯係)や警備業協会を通じて行います。
合格者には「成績証明書」が交付され、これが「検定合格証明書」の取得に必要です。
・登録講習機関による特別講習
警備員特別講習事業センターや航空保安警備教育システムなどの登録講習機関が実施する講習を受講します。
講習は実技と学科を含み、終了後に修了考査が行われます。
修了考査に合格すると、公安委員会に申請して「検定合格証明書」を取得できます。
この方法は費用が高めですが、合格率が比較的高い傾向にあります。
試験内容
学科試験: 警備業法、警備業務の理論、事故防止や対応方法など。
実技試験: 業務種別に応じた実際の警備行動やシミュレーション。
難易度と合格率
直接検定は難易度が高いとされ、未経験者にはハードルが高いです。
登録講習機関の特別講習は、講習内容が試験範囲をカバーするため、合格率が高い傾向にあります。
受験資格
特に定められた資格はなく、警備業に従事している人やこれから従事する予定の人なら誰でも受験可能です。
機械警備業務管理者は、警備業法によって定められた国家資格であり、機械警備業務に従事するために必要な資格です。
この資格を持つ者は、機械警備業務の適正かつ効果的な実施を確保するため、高度な専門的知識と業務管理能力を有していると認められます。
具体的には、警備業務用機械装置(監視カメラやセキュリティシステムなど)の運用、維持管理、警備計画の立案とその監督を行います。警備業者は、基地局ごとに機械警備業務管理者を選任し、その情報を管轄する公安委員会に届け出る義務があります。
この資格は、企業の事務所や施設だけでなく、一般家庭向けのホームセキュリティも含めた警備業務に適用されます。
機械警備業務管理者を取得するには、以下の方法があります。
受験資格
誰でも受講可能で、警備業の経験や特定の学歴は問われません。
講習の受講
一般社団法人東京都警備業協会などが実施する「機械警備業務管理者講習」を受講します。
この講習では、警備業法や関連法令、警備業務用機械装置の運用などが教えられます。
修了考査
講習終了後、修了考査があり、これに合格する必要があります。
合格率は比較的高く、約80%程度と言われており、講習内容から出題されるため、準備さえすれば難しくはありません。
資格者証の交付申請
講習修了後、機械警備業務管理者資格者証の交付を公安委員会に申請します。
この際、必要書類(履歴書、住民票、身分証明書、医師の診断書など)を提出します。交付には、80%以上の正答率で考査に合格する必要があります。
受講料と申請手数料
講習受講料は39,000円、資格者証の申請手数料は9,800円です。
講習のスケジュールや申込方法については、東京都警備業協会や各都道府県の警備業協会のサイトで確認できます。また、講習の実施日程は変更される可能性があるため、定期的に確認することが推奨されます。
航空保安管理者(Airport Security Manager)は、空港の安全と保安を確保するための重要な役割を担います。この職務は、不審な行動や物の監視、セキュリティチェックの監督、緊急時の対応などを担当します。
・セキュリティチェックの監督: 乗客や荷物に対するセキュリティチェックの運用を管理し、安全基準が遵守されているか確認します。
・不審物・不審者の監視: 空港内での不審な行動や物を監視し、必要に応じて適切な措置を講じます。
・緊急対応: 事故やテロの可能性がある場合の緊急対応計画を策定し、実行します。
・訓練・教育: スタッフに対するセキュリティトレーニングを提供し、常に最新の情報に基づいた対応ができるようにします。
航空保安管理者として働くためには、まずは空港での保安業務に従事し、そこから経験を積むことが一般的なキャリアパスです。さらに、英語力やその他の言語能力も求められることが多いため、国際的な環境でのコミュニケーション能力も重要です。
航空保安管理者の資格を取得するには、以下の方法があります。
日本では、具体的な「航空保安管理者」の試験は存在しませんが、類似する資格として「空港保安警備業務検定」が挙げられます。
この検定は、空港の保安業務を理解し、対応できる知識や能力を証明するためのものです。
基礎的な教育と経験:
通常、大学や専門学校でセキュリティ管理、法学、刑事司法など関連分野の学位を取得するか、関連する実務経験を持つことが求められます。
専門的な訓練:
実務的な訓練や、国土交通省や航空保安協会などが提供するセミナーやワークショップに参加することで、必要なスキルを習得します。
資格とライセンス:
航空保安管理者の立場で働くために、特に特定のライセンスは必要ありませんが、セキュリティ関連の資格(例えば、警備員指導教育責任者や危険物取扱者の資格など)を保持していると有利です。
継続的な学習と更新:
セキュリティの分野は常に進化しているため、法規制の変更や新しいセキュリティ技術についての情報を常に更新する必要があります。
特殊警備業務検定は、警備業務に従事するために必要な専門知識や技能を認定する国家資格の一つです。
業務内容: 特殊警備業務検定は、警備業務法に基づく警備業務のうち、「特殊警備業務」に関する知識や能力を評価するものです。
具体的には、特定の施設やイベントでの警備、機械警備、交通誘導などが含まれます。
級の区分: 特殊警備業務検定には1級と2級があり、1級が上位資格とされています。
2級は基礎的な知識と技能を問い、1級は更に高度な知識と経験が求められます。
受験資格
2級は18歳以上で受験可能です。1級は、2級取得後、該当業務に1年以上従事していることが必要です。
直接検定
・実技試験: 実際の警備業務を模したシナリオでの実技試験が行われます。これには、例えば警備員としての対応力や機器の操作能力が含まれます。
・学科試験: 警備業務に関する法律、警備技術、防犯・防災知識などについての筆記試験です。
・受験資格: 2級は18歳以上で受験可能です。1級は、2級取得後、該当業務に1年以上従事していることが必要です。
・合格基準: 一定の合格ライン(通常80%以上)を超える必要があります。
特別講習
対象: 現に警備員として勤務している方や、警備業務に従事する予定の方が対象です。
内容: 講習では、警備業務に関する知識や技術を学びます。講習終了後に試験が行われ、合格すれば検定合格証明書が交付されます。
自衛消防業務は、日本の消防法に基づき、大規模な建物や特定の用途に使用される防火対象物において、火災などの災害から人々や財産を守るために設置される自衛消防組織の活動を指します。
この組織は、初期消火、消防機関への通報、避難誘導などの業務を行います。
具体的には以下のような役割があります。
・初期消火活動:火災発生時に迅速に消火活動を行う。
・避難誘導:建物内の人々を安全に避難させる。
・消防機関への通報:火災発生を速やかに通報し、救助を要請する。
自衛消防業務に従事するためには、以下の手順で必要な資格を取得します。
自衛消防業務講習を受講
講習は東京消防庁や一般財団法人日本消防設備安全センターなどの機関で実施されています。講習内容には、火災の原因と予防、初期消火方法、避難誘導、消防用設備等の操作方法などが含まれます。
これらの講習には新規講習と再講習があり、再講習は初回講習から5年以内に受講する必要があります。
講習修了証の取得
講習を修了すると、自衛消防業務講習修了証が交付されます。この証明書を持つことで、自衛消防組織の統括管理者や本部隊の班長として活動できるようになります。
申請と登録
防火対象物の所有者や管理者は、自衛消防組織の設置を義務付けられている場合、講習修了者を統括管理者や班長に配置しなければなりません。これには通常、防火対象物使用開始届出書などとあわせて必要書類を提出するプロセスが含まれます。
更新
自衛消防業務講習修了証は5年ごとに更新が必要です。更新には再講習を受講する必要があります。
警備職のメリット
1. 雇用の安定性
- 警備業務は常に需要があり、特に都市部では24時間体制の警備が必要なため、雇用の安定性が高いです。
2. 多様な職場環境
- イベント会場、ビル、オフィス、学校など、様々な場所での業務が可能です。これにより、職場環境の選択肢が広がります。
3. 身体的な健康維持
- 仕事の一部がパトロールや立ち番などであるため、自然と運動が伴い、健康維持に役立ちます。
4. スキル開発
- リスク管理、対人コミュニケーション、緊急対応など、多岐にわたるスキルを身につけることができます。
5. 社会貢献感
- 安全と安心を提供する仕事であるため、社会貢献感が大きいです。
警備職のこれからの将来性
1. テクノロジーの進化
- AIやIoT、ドローンなどの技術導入により、警備業務の一部が自動化される可能性があります。しかし、これは人間の警備員の役割を補完するものであり、完全な代替にはならないと考えられます。また、新たな技術を使いこなす警備員への需要も増えるでしょう。
2. 社会的な安全ニーズの高まり
- テロ対策、災害対策、個人情報保護など、社会全体の安全意識が高まるにつれ、警備の重要性は増しています。特に日本では高齢化社会が進んでいるため、福祉施設などでの警備需要も増加する可能性があります。
3. イベント開催の増加
- 国際的なイベントや国内の祭り、コンサートなどが増えると、その都度警備員の需要が発生します。2020年の東京オリンピックを皮切りに、大規模イベントの開催が増えると予想されます。
4. 教育とキャリアパス
- 警備業界も他業界同様に専門性を求める傾向が強まっており、訓練プログラムや資格が重視されるようになります。これにより、キャリアアップの道が開け、長期的なキャリアパスを見据えることができます。
5. 法規制の強化
- 安全確保のための法規制が強化されると、より高いレベルの警備が求められます。これは、専門的な知識とスキルを持つ警備員に対する需要を増加させるでしょう。
警備職は今後も社会的需要が見込まれる職種であり、適切なスキルと知識を備えることで、安定したキャリアを築くことが可能です。
ただし、これらのメリットや将来性を最大限に引き出すためには、継続的な学習と技術への適応が必要です。